ホームレスの夜回りに参加して


 聖母の小さな学校では人間の基本を大切に教育に当たります。その一つは全ての人々と共に生きて ゆける人間に育てるということです。自分の理解の範囲を越えた人、自分から手をのべて仲間になりたいとは思えないような人、自分の側にある人ばかりではなく正反対の人、おおよそこの他の全ての人々と共に手を携えて力になりあって生きていける人に育てたいと考えています。「人を差別してはならない」という強者の論理ではなく、「人は差別されてはならない」という人間の論理に立ち、更に一歩すすんで「全ての人は尊敬されなければならない」をキーワードにできる程、人権学習をして参りました。その中で一人の卒業生が、「ここでいう人と人との関係は友達や家族とは違って、自分とは関係のないことや、直接関係のない人たちのことです。
 以前学校の特別授業の人権学習で遠藤先生が、戦争や飢えなどで苦しんでいる人たちの写真を見せて、この写真を見て自分は関係ないと言えるか?と言われて、その時はたしかに自分とはもちろんみんなも関係ない。だけども関係がないで終わってしまってはだめだと思った。今ほかの人たちに同じ質問をしてもみんな自分には関係ないと言うだろうし、関係のある人も自分には関係ないで終わってしまって、今苦しんでいる人たちはそのまま苦しみ続けることになる。だからこそ自分さえよければいい。自分にとって関係のない人はどうでもいい、と思うのではなくて、関係がないならばこちらから関係をもてばいい、今困っている人、苦しんでいる人たちが少しでも楽に、幸せになれるようにいい関係をこっちから求めていけばいい。困っている人や弱い人は自分の方から声をあげることはできないのだ。」という作文を残しました。私たちが現代社会の「痛み」を自分のこととして感じ、そこに立ち声をかけ「共にある」こと、それが社会を善いものに変えて行くと確信しています。野宿を余儀なくされている人々への夜回りボランティアを卒業生が計画致しましたところ率先して保護者の皆さんが協力して下さいました。参加生徒、保護者の声を載せます。生徒たちが保護者をよい行いへ、よい人間へと導いていることが感じられます。

(この体験学習には生徒5人と父兄8人が参加されました。そのうち1編ずつを以下に載せます)


生徒

行く前の気持ちと考え
 前に一回ホームレスの人を見た時、青いビニールシートがずらっと並んでいるところで寝ている人がたくさんいて、その時はあまり近くに行きたくないという風に感じました。テレビで路上で死んだ人の話を見たり仕事につこうとしてもなかなか見つけられないということなどを知って、それからかわいそうだなと思いました。夜まわりに出かける前は、こんばんはと声をかけたい気持ちもあったけどどんな人たちなのかと思って少し緊張しました。

自分のまわったところの人々はどんな人たちでしたか
 初めは商店街の路地のところや建物の階段の踊り場で会いました。みんなボランティアの人と友達みたいに話していました。階段のところにいた人がどこから来たのか聞いたり、舞鶴の話をしてくれました。神社に一人で寝ている人もいました。街の中を行くと地下へ下りる階段の踊り場にいる人が多かったです。ここでもみんなボランティアの人と話していました。お茶を渡すとありがとうと声をかけてくれました。ダンボールをつないだ中で寝ている人たちもいました。でもボランティアの人が声をかけるとみんなカイロを下さいと行っていました。横に荷台のついた自転車を置いているところがありました。

まわって自分は何をしましたか
 お茶を入れて時々渡したりしました。

何がうれしかったか、また何にとまどったか
最初に会った人たちがボランティアの人と話しているのを見て、あんなに友達のように話すと思っていなかったので初めは驚きました。
 お茶を渡した時にありがとうと言って笑う人がいたり、みんな私たちが行ったらうれしそうな顔をしている人がいて少し緊張していたのが安心しました。ダンボールで寝ている人たちがいたけれどそれがとてもせまそうでした。

行ってみて自分の考えと思い
 今回ホームレスの人たちに会ってあいさつしたりお茶を渡したりしていて前は恐そうだなと思っていたけれど実際は全然違ったなと思いました。最初に声をかけてみたらと言われて、少しどうしようかなと思ったけれど、私たちが行ったら向こうから迎えてくれるような感じがしました。ボランティアの人がこういう関係になるまでに時間がかかったんだと言っているのを聞いて初めから心を開いて話していたんじゃないんだということがわかりました。それでもボランティアの人たちと話をするうちに変わってきたのかなと思いました。私もお茶を配るだけでなくて、こんばんはと声をかけられて良かったです。一人で寝ている人やカゼをひいておられる人がいてかわいそうだなと思いました。実際に言葉を交わせて良かったし、またもっと色々な人にも会いたいと思いました。今まであまり興味をもったことがなくて知らないことばかりだったけど前よりも分かったことがありました。

「全ての人は尊敬されなければならない」と思いましたか。
 ホームレスの人が寝る場所にゴミを投げる人がいたり暴走族がうるさいということを聞きました。仕事につきたくても住所や保証人がなくてホームレスの人たちは絶対に仕事につけないようになっているというのを聞いてとても厳しいことばかりで悲しいなと思いました。前は恐そうだなと感じたけれど、会ってみたら全然違いました。もっとホームレスの人たちのことを真剣に考えて辛いことがなくなればいいと思います。


生徒の父

行く前の気持ちと考え
 私自身が奉仕活動に参加するという気持ちは特になく、子どもの保護者としてついて行くという義務的な考えだったと思う。

自分のまわったところの人々はどんな人たちでしたか。
 ホームレスの人たちが現在の状況にどのような過程でなられたのか察することは出来ませんが、私の今までのホームレスに対するイメージ(暗い・汚い)とは違い明るい人たちが非常に多かった。

まわって自分は何をしたか
「こんばんは」「おやすみなさい」と声をかけて回りました。毛布も持って回りましたが、必要な方は一人だけでした。

何がうれしかったですか、また何にとまどいましたか
 こちらが声をかけると初めての私にも気楽に返事をくれたこと。しかしそれ以上どの様な会話をすれぱいいのか言葉が出てきませんでした。

行ってみて自分の考えて思い
 2時間余りの短い参加で、私の今までの奉仕に対する考え方、気持ちが変わったとは思いませんが、それよりもボランティアの方々とホームレスの方々との今日の様なつながりの深さなど十数年間の活動の結果を目の当たりにして、継続していくことの大切さを思いました。

「全ての人は尊敬されなければならない」と思いましたか
 全ての人が尊敬されるかどうかは分かりませんが、全ての人は差別されることなく公平な権利が与えられることが大切だと思います。


(2002年度 聖母の小さな学校文集「自分をみつめて」から)